作家・東峰夫 公式ブログ

東 峰夫 小説家。第33回文學界新人賞受賞、第66回芥川賞受賞。 著書: オキナワの少年(1972) 、ちゅらかあぎ(1976)、大きな鳩の影(1981) 、ママはノースカロライナにいる(2003) 、貧の達人(2004)、『現代の神話シリーズ』執筆中

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

死人に口無し?

《死人に口無し》という諺がある。それをどう使うかというと、「目撃者は殺してしまえ。死人に口無しだ」とか、「死人は釈明もできないから、真相は謎のままに残る」というふうに使う。しかし本当に《死人に口無し》であろうか? ぼくは『ユパの博物誌』で[…

雲の屹立

現代神話を書こうと志す作家にとって、哲学や心理学は必修科目であった。それゆえこれまでずいぶんと観念の川や情念の雲について哲学してきたものだ。[不可知の雲]といわれている対象に多くの時間を費やして挑んだのである。世間の学者で雲について哲学し…

ユパの博物誌

この本のタイトルは[ユパの博物誌]。それというのは、この本をリュックに入れての冥界旅行だったからである。主人公は旅の間中、この本を読んだ。書物が一冊もない飯場小屋で、あるいは一時期だけ住んでいた学生寮で、バイブルとして読んだのである。その結…