作家・東峰夫 公式ブログ

東 峰夫 小説家。第33回文學界新人賞受賞、第66回芥川賞受賞。 著書: オキナワの少年(1972) 、ちゅらかあぎ(1976)、大きな鳩の影(1981) 、ママはノースカロライナにいる(2003) 、貧の達人(2004)、『現代の神話シリーズ』執筆中

なぜ人殺しは、いけないのですか?

道理の道筋については誰もがよく知っているつもりでいるが、じっさいのところはどうであろうか?
「なぜ人殺しは、いけないのですか?」と小学生に質問されるとシドロモドロになってしまう先生だっているのだ。知っているはずなのに説明するとなると難しいのである。
「人殺しがいけないなら、大人はなぜ戦争ばかりやっているの?」とつっこまれて、窮地に立たされる。政治家や経済学者に至っては、生存競争を飽くことなく論じる。しかしぼくならそのような質問には、単純にこう答えるであろう。
「人殺しすること。殺せば獣に退化するからだ。せっかく人に生まれたのに獣に逆もどりするのは、もったいないことではなかろうか?」と。
 そう教えれば小学生だって納得するであろう。「人を殺せば天罰を受けるから」とか、「宇宙神が殺してはならないと戒めたから」とかと説明してもよいが、獣の道を歩む者には分からない。

~天から町がふってくる[新しい市民生活場の理念](執筆中)より~