質を売って量を売るな
「大事なことがまだ二つある」
「え?何でしょう?」
「それは質を売って量を売るなちゅうことじゃ。昔々、あるところに石屋がおってな。山から石を切り出して売っておった。良質の石はよく売れたものじゃから、切りにきり売りにうったら石が無うなってしもうた。山の石がぜーんぶ売り切れてしもうたんじゃ。結果、仕事も無うなった。生活は預貯金で安楽ではあったが仕事の楽しみは無うなった。
石屋は石を切って売るより他に何もできんから、毎日ぶらぶらと歩くばかりじゃった。ところがある時、切り出して売った良質な石が砕石となって敷かれとることに気がついたんじゃ。大量に出まわった石は値打ちがさがり、砕石にされて道路に撒かれたのじゃろう。そこで石屋は嘆いていうたんじゃ。『あー、あの良質な石が足に踏まれとるとは何たることか。石は質を売って量を売るんじゃなかった』とな」
~②現代の神話シリーズ 『天魚大概論』(執筆中)より~