作家・東峰夫 公式ブログ

東 峰夫 小説家。第33回文學界新人賞受賞、第66回芥川賞受賞。 著書: オキナワの少年(1972) 、ちゅらかあぎ(1976)、大きな鳩の影(1981) 、ママはノースカロライナにいる(2003) 、貧の達人(2004)、『現代の神話シリーズ』執筆中

世の中には動物みたいな人が大勢

「世の中には動物みたいな人が大勢いるわよね?」と白日夢に母が現れてそういった。
「だからだよ、だからいっているじゃないか!外見は人間だけど内面の性質を見ると動物的なのがいっぱい。それが保守本流になってるよ。咆哮恫喝する獅子人間、強欲で狡猾な龍人間、虎の威を借る狐人間、冷血で狡知の蛇人間、荒野に生きる狼人間、主人に忠実、他人に反目の犬人間、貯えを盗む鼠人間、お惚け老獪な狸人間、生徒をいじめる鎌鼬人間、夢を食べて生きる獏人間。霊を視る馬人間、ゆっくり牛歩の牛人間、猪突猛進の猪人間、知識摂取欲が旺盛な豚人間、媚態と冷淡を使い分ける猫人間、性欲が強い兎人間、人真似上手な猿人間といっぱいいるんだ」

~①現代の神話シリーズ 『かつてぼくは羊だった』(執筆中)より~

草と知識と比喩は等号

あえていうけれどかつて羊だった頃、ぼくは比喩としての知識の草をたくさん食べた。草食獣としてさまざまな草を食べながら草原を放浪したんだ。だから知識の草については、辞典に載ってないことだって知っている。じつは草と知識と比喩は等号で結びつく三つのものだ…

~①現代の神話シリーズ 『かつてぼくは羊だった』(執筆中)より~

かつてぼくは羊だった

 そう、かつてぼくは羊だった。フカフカの体毛におおわれた白いヒツジ。メェーと鳴くあれだ。これから羊だった頃の思い出を記憶の中から引っぱり出して話そうと思う。記憶の中には、あの頃のさまざまな体験がつまっている。細切れの体験だが、ちゃんと保管されているので、なんの疑いもない。それをつなぎあわせたら、かなり長い実在的(リアル)な物語となるであろう…

~①現代の神話シリーズ 『かつてぼくは羊だった』(執筆中)より~

旗揚げの準備はできている

 北海道新幹線の夢。

ぼくは新幹線に乗った。列車は北へ向かっていて、窓の外は陽光に照らされて明るかった。

「雲一つなく晴れている」と乗客の誰かがいった。と、車内アナウンスがあって、こういうのだ。

「今日は記念すべき日です。さて、何の記念日でしょうか? 窓の外にヒントがあります」

それでみんなは窓の外を見た。

北海道新幹線が初めて走る日か?すると今、乗っている列車がそれなのか?」と思った。と、その時、一瞬ではあったが窓の外にポールが立っているのが見えた。

「あっポールだ」とぼくはいった。

後ろの席にいた女性も声をあげた。

「ポールね。あれがヒントかしら?」

ポールは旗を揚げするための竿である。二本目のポールが飛び去っていくのが見えた。しかしポールに旗はなかった。

 [旗上げの準備はできているのね?]という声が聞こえた。

そこで夢から覚めた。その日は作品紹介をするためのブログを立ち上げる日でもあったのだ。その意味を考えて、地母神ガイアに感謝した。

「教えてくれてありがとう」と。

2016年3月25日 東 峰夫