作家・東峰夫 公式ブログ

東 峰夫 小説家。第33回文學界新人賞受賞、第66回芥川賞受賞。 著書: オキナワの少年(1972) 、ちゅらかあぎ(1976)、大きな鳩の影(1981) 、ママはノースカロライナにいる(2003) 、貧の達人(2004)、『現代の神話シリーズ』執筆中

[描く]と[書く]

そのことについて考えるよう、しきりに促されていた。[描く]と[書く]の類比について熟考しなければならない。ぼくに憑いた言霊にそれを督促されているのだ。

描くとは筆や刷毛などでペインティングすることだ。キャンバスや画用紙にペイントするのである。建物にペンキを塗ることもペインティングという。塗装工のことをペインターともいう。他方、書くといえばノートにインクで記すことだ。英語ではライティングという。著述家のことをライターともいう。

確かにそれは似ている。ペンを用いるところは違うが、昔、日本では文字も筆で書いていたのであった。いずれにせよ、対象を描くか書くかして表現し、紙の上に定着するわけである。定着するという意味では同じである。もちろん文字で定着するか、塗料で定着するかの相違はあるが、インクのことを塗料と見なせば同じことになる。

だが、文字を塗料と見なすことはできるであろうか? インクや墨汁や、絵ノ具やペンキは塗布材料なのだが、文字言語もそうであろうか? 言語を四八色の絵ノ具と見なせるであろうか? いや、言語は絵ノ具じゃないと思いたいところだが…と考えたのだった。

~天から町がふってくる[新しい市民生活場の理念](執筆中)より~