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作家・東峰夫 公式ブログ

東 峰夫 小説家。第33回文學界新人賞受賞、第66回芥川賞受賞。 著書: オキナワの少年(1972) 、ちゅらかあぎ(1976)、大きな鳩の影(1981) 、ママはノースカロライナにいる(2003) 、貧の達人(2004)、『現代の神話シリーズ』執筆中

米と[篤実]

(山に入って思索したい)と思った。それで朝露にぬれた畔道を通って山へ向った。考えるべきことは山ほどあった。だから山で思索したいというわけではなかったが、とにかく自ずと足は山へと向ったのだ。

 明け方の夢で、ユング師が彼の書斎にあった羊皮紙の稀覯本をみせながら、[十物について]語ってくれた。それは七象十物の中の[十物]のことであった。

[…一は二となり、二は三となり、三は四となる。合わせて十だ。そこに十の産物があり十の産業が産まれる。産業は相互依存の共同体でなされるのが最善(ベスト)である]と彼は語った。

それは大事なことであったから、ぜひとも解りたいと耳を傾けたのだった。

[…たとえば大地が『無機鉱物』なら、そこから鉱物資源が産出される。それはそのまま鉱業となり建材業となる。それが第一段階の産業である。

大地からは『有機植物』と『動機動物』の二つが生まれる。植物からは米、麦などの食糧が得られ、動物からは牛乳、卵などの食物が得られる。たとえば羊毛からは毛糸、蚕からは絹、獣皮からは毛皮が得られるのだ。それが第二段階の産業である] 

[…そして第三段階の産業として衣料縫製業、食品加工業、住宅建築業が生まれる。それらは『衣・食・住』の需要を満たすための産業で、衣とは信服の着物、食とは心糧としての食物、住とは安住のための建物である]と彼はいった。

[…さらに第四段階に家具什器などの品物と、本などの書物と、靴などの履物と、宝飾品などの品物が製作される。かくして一は二となり、二は三となり、三は四となるのである。合わせて十の物産業というわけだ]と彼は語ってくれた。

夢から覚めて反芻した。そして思索にはまりこみたいと思ったのである。 

十物にはそれぞれ意味イデアが含まれてあるようだ。いずれにせよ、作業分担してそれらを生産し、産出したものを等分配するというのが最善(ベスト)であるという。それが隣人愛による相互依存と相互扶助の生活共同体であろうか? と思った。

~ 『奥村にて』真実の成果について(執筆中)より~