ユパの博物誌
この本のタイトルは[ユパの博物誌]。それというのは、この本をリュックに入れての冥界旅行だったからである。主人公は旅の間中、この本を読んだ。書物が一冊もない飯場小屋で、あるいは一時期だけ住んでいた学生寮で、バイブルとして読んだのである。その結果、この本は旅の指南書となり、生活の教則本となったのである。
そういうわけで副題は[心霊の存在証明]。謎にみちた心霊存在を分数式で鮮やかに証明して見せている。ユング氏やパウリ氏が指導霊となって、手伝ってくれたから、そんなことができたのであろう。作者は経験上、神霊からのインスピレーションを受けて、それに同調しながら書くものである。そうでなければ書けないことを知っている。例えば役者が迫真の演技をするためには、霊魂がいっしょになって演じてくれることを念願する。それをしない者を大根役者という。
作品の材料は例のごとく[夢日記]から採った。主人公は夢日記をつけていたので、日記から適切な材料を選んで、現代の神話にすべく綴り合わせたのである。それに心血を注ぎ入れたことはいうまでもない。つまり思考と感情を注入して生命(いのち)を与えたのである。分身としての作品を『生きたもの』にするために、それは必須条件であった。イミテーションを産み出すつもりは毛頭ない。
以上でまえがきをおえる。それでは始めるとしよう。
~『ユパの博物誌』心霊の存在証明(執筆中)より~